ルビコンの灼けた空で、俺は引き金を引いた
ACⅥの話をする。
2ルート見てない人は、絶対に見てからまた来てくれ。
そしてまだ2周目終わったところだから、間違いや記憶違いは許してくれ。
1周目では、彼の遺志を継いだ。
ここまで来られたのは、彼とカーラのお陰だった。俺は彼らを裏切れなかった。
カーラに従い出撃するときの、聞いたことのない昏さを伴ったエアの『……残念です』が耳にこびりついて離れなかった。
そして繰り返し聞かされた『レイヴン、私は、あなただけが……』は胸に刻まれていた。
2周目、彼の遺志に背いた。
カーラとチャティ、彼女らのことは好きだった。だからこそ辛かった。その痛みは背負わなければいけなかった。
自らの死すら計画に入れた、覚悟を目にしたから。
俺のことを"戦友"と呼ぶ彼が──ラスティが参じたとき、背筋を走るものがあった。熱い展開に血が滾る。
ラスティとともに戦うのがスマートクリーナーであり、その先に待ち受けるのがバルテウスというのも、あまりにも。
そしてラスティの機体反応が消失したとき。
──今思えば、自分の察しの悪さに感謝している。
なぜなら、誰がラスティを消したのかわからなかったから。
RaDの連中ではない。
カーラもチャティも、俺がこの手で殺したのだから。
アーキバスでもないはず。
ラスティは今消え、スネイルも殺したから。フロイトだろうか? しかし彼では格が足りないだろう。
ベイラムではないだろう。
レッドガンはほとんど死に、ミシガンも死んだはずだ。だいいち敵対する理由がない。
ルビコン解放戦線?
そんなはずはない、彼らは今ともに戦う友軍だ。
様々な想像がよぎるなかエンジンを破壊し、落ちゆくザイレムを眺める俺の前に降り立った、見知らぬAC。
『……621』
そう呼びかけられたとき、コントローラを握りしめていた。
これが、俺の選択か。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
彼は、『ここからは、俺の……いや、お前の感覚を信じろ』と言った。
彼女の『友人の意思に背いてもかい?』という言葉に対して、
彼は、『あいつにも、友人ができたのかもしれん』と答えた。
だからきっと、これでよかったのだと思っていた。
遺志に背いても、彼ならば俺の選択を尊重してくれるだろうと。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
だが、今目の前でコーラルの光を纏う彼は、倒すべき敵だった。
頭の中で鳴り響くエアの警告。
耳元を掠める銃弾。
AP残量を告げるCOMの音声。
自らが放つ、硝煙の臭い。
死と隣り合わせの中、彼と殺し合う。
『……621。終わったら、再手術をして……やり直せ。……お前の、稼いだ金だ』
じわりと、視界が滲む。
彼は、こんな状態でも俺のことを。
意識が混濁している彼を、一体何が突き動かしているのか。俺にはわからなかった。
わかるのは、彼を殺さなければ俺が殺されるという、突きつけられた銃口だけ。
俺が握っているのは、コントローラではなかった。今、指をかけているのは。
だから俺は、この灼けたルビコンの空で。
「さようなら、ウォルター」
引き金を引いた。